- TOXIC 4 -

 

お風呂から上がったあたしは、部屋で飲んでる組にしばらく合流して飲んだあと、自分の寝室に戻った。

もう午前3時過ぎだっていうのに、6つある布団には一人寝ているだけ。

もー、みんな、どこ行ってるんだか…。

暗闇の中、その子を起こさないように、そっと布団に滑り込む。

あーもう、今日は何だか疲れたっ。

温泉宿だから朝は強制的に起こされちゃうんだし、さっさと寝ようっと。

ふう、とため息をつくと眠っているはずのコがもぞもぞと動くのが見えた。

あ、起こしちゃったかな、ごめんごめん。

 

目をつぶって、眠りに落ちるまでの、この時間があたしは一番好きなんだよね…。

温かい、お湯に浮かんでるみたいな感じー、なんてふわふわと覚醒と睡眠の間を行ったり来たりしているあたし

の瞼が、ふいに光を感じた。

襖が開き、誰かが部屋に入ってきた気配がする。

あ、誰か戻ってきたのかな…。

目を開けるのもだるかったあたしはそのまま目を閉じていた…んだけど!

自分のすぐ近くに誰かの気配を感じて…。

んんっ?と思っているうちに、布団に滑り込んできた手に胸を触られたあたしは、一気に目が覚めた。

だ、だ、誰!!??

あまりの驚きに体を動かせないあたしは、必死で暗闇に目を凝らした。

どうせ、こんなコトするのはあの鬼畜中村に…って!?中村さんじゃないっ!!

 

「ふ、福山さんっ!!??」

あたしは、自分の見ているものが信じられない。

あの、人格者の福山さんが、あの、常識家の福山さんが、こ、こ、こんなコト…。

「唯ちゃん…ずっと、好きだったんだ…。隣の部屋で寝てるって思ったら、我慢できなかった…」

えええええっ??

「あの、困ります!あっちに他の子寝てるし、あの、そんないきなり…」

彼女を起こさないように小声で囁くあたしの努力に福山さんは気づく様子もなく続ける。

「いいじゃん…。ぐっすり寝てるみたいだよ」

顔を近づける福山さんの息がお酒臭くて、ぞっとする。

やだやだ、こんなの、絶対イヤ!福山さんは嫌いじゃないけど、こんなのイヤッ!!

「唯ちゃんって、着やせするんだね…」

彼の汗ばんだ手が、あたしの胸元に滑り込む。

その指先の感触に、ぞわりと肌が粟立った。

 

「やだっ、いやっ、誰か…中村さん!」

混乱していたあたしは、なぜだか分からないけど、中村さんを呼んでいた。

あたしのバカ…!

どうせ今ごろ、他の女の子と、いちゃいちゃしてる中村さんを呼んでどうすんの?

一緒に流星を見ようなんて言われて浮かれて…あんなの、ただの誰にでも言う戯言だったのに…。

浮かれてキスまでして…あたし、ばかみたい…!

暗闇の中でもがくあたしたちを射抜くように、突然部屋の明かりが点いた。

あまりの眩しさに、とっさに目を閉じる。

い、いきなり何が起こったの?

 

「ヒーロー登場〜!!福山め、アーンパーンチ!」

女の子が寝ているハズの布団がめくりあがっていて、なぜかそこに中村さんが仁王立ちしている。

「女の子の部屋に忍び込むなんて、下劣なヤツめ!しかも、俺の唯ちゃんに触りやがって!」

浴衣姿のまま、びしりと福山さんを指差す中村さんの姿にあたしは呆然とする。

えっと…でもアナタも、この部屋に忍び込んでたんじゃ…。

そんなあたしの心の中の突っ込みを知る由もない中村さんは、福山さんの胸倉を掴むと部屋の外にうりゃあっ、と

強引につまみ出した。

福山さんの、「んだよっざけんな…ひっく!」という、わめき声は、酔っ払い特有のもので、明日には今の出来事は

忘れてそうだった。

って言うか、ぜひ忘れててほしいけど、お互いのために。

 

ぴしりとふすまを閉めて部屋の中に戻った中村さんは、あたしの前に座ると、福山さんによってはだけさせられた

胸元を優しい手つきでかきあわせてくれる。

そしてあたしの頬にそっと手を当てて、どこも痛くない?と訊く彼に、あたしは首を微かに横に振る。

どこも痛くは、ない。

でも…福山さんに触れられてすごくすごく、嫌、だった。

強引に触れてくるのは、中村さんも同じ。でも、同じじゃ、ない。

その事に気づいてしまったあたしは、自分の感情をどう隠せばいいのか分からなくてとまどう。

そんなあたしの物思いを断ち切るように、彼が言葉を紡ぐ。

 

「唯ちゃんが無事で、良かった」

ほっとしたようなその口調に、あたしはじんわりと嬉しくなる。

中村さん…いつもふざけてるけど、本当は…。

感動しかけたあたしに、彼がころりと口調を変える。

「悪者も無事退治したことだし…さ、Hしよ?」

そう言ってあっさりと明かりを消そうとする中村さんにあたしは思わず叫ぶ。

「ちょ、ちょっと!しゃ、社員旅行ですよ!?

 この部屋のコたちもいつ帰って来るか分かんないのに、まさか今からここでする気じゃ…!」

あせるあたしを見下ろす中村さんが、心底不思議だとでも言いたげに、目を丸くする。

「え?だって、浴衣で、布団があって、好きあってる男女がいたら、トーゼンでしょ?

 ココにいないコたちだって、みんなしてるからいないんだよー」

そんなワケあるかっ!!!

この人に常識的な説得は効かないんだった!と思い出したあたしは、別の方法をひねり出す。

えっと、えっと…。

「お、お風呂で非常識な場所じゃしないって言ってたじゃないですかっ」

その言葉を聞いて、きょとんとした顔の彼が、あたしの髪を優しく梳きながら眉をひそめる。

「え?だって、あんなとこでしたら、唯ちゃんの身体にバイ菌入っちゃうじゃん」

ひ、非常識って、そーゆー基準で、ですかっ!

お願いですから、もっと他の基準も導入してくださいっ!!

 

そう思いながらも、中村さんのキスを受け入れているあたしの身体は、まるで毒に冒されてるみたいに熱くなって

いく。

いつ、誰が入ってくるか分かんないのに…中村さんの指が、あたしに触れる度に、細胞が一つずつ、歓んでるの

が分かる。

さっき、福山さんに触れられたときとは、当たり前だけど全然違う。

彼の親指が、くすぐるようにあたしの睫毛にそっと触れた。

「唯ちゃんが、福山なんかに流されなくって良かった…。

 俺、出張の時も、会社の時も、唯ちゃんが流されただけで…俺のこと、本当になんとも思ってなかったらどうし

 ようってずっと思ってたんだ」

耳元でそうささやいた中村さんの唇が下りてきて、あたしの唇と溶け合うように一つになる。

柔らかくて、温かな舌が、あたしの舌と絡んでお互いを求め合う。

その間にも、中村さんの両手が、切なく、もどかしそうに、あたしの身体を抱きしめる。

浴衣の上から、大きな手のひらがあたしの胸を優しくもみしだくたびに、ずくん、と熱が生まれる。

ああ…ダメダメ…止めなきゃ…こんなところ、誰かに見られたら身の破滅なんだから…。

そう思うのに…キスが深まるたびに、心がほどけていく。

 

目を閉じたまま彼のキスを受けていたあたしは、自分が今日着けてたブラが、中村さんが担当した商品だった

ことを思い出した。

淡いピンクに、細かいレース…通販の商品に、リヨンのレースなんてゼイタクだって言われたのを、中村さんが

押し切ったんだっけ…。

そのブラのホックを外しながら、彼は嬉しそうにあたしを覗き込んだ。

「これ…着けてくれてんだ…。良かった、これ、唯ちゃんのイメージで作ったからさ…」

中村さんの舌が、レースに隠れていたあたしの蕾を探し出し、ねっとりと責める。

優しくついばんだり、ちょっと強く噛まれたり…。

「あ…んっ…!」

思わず漏れた声が大きくて、隣の部屋に漏れなかったか心配になって慌てて口をつぐんだ。

様子を伺ってみると、何事もなかったように隣からは、時折笑い声が聞こえてくる。

…ほっ、よかった…。

 

彼があたしの胸に、脇に、おへその周りにとキスを落とすたびに、あたしは自分の腰が中村さんを求めてよじれる

のを感じた。

自分の中心が、もうすっかり熱く蕩けていて、彼の指を待ちわびている。

もう触って、我慢、できない。

そんなあたしの思いを察したように、中村さんがクロッチの上から、茂みをやさしくいじる。

クレバスの上をそっとなでられる度に、自分の中が収縮するのが分かる。

「唯ちゃん、熱いよ…」

耳元で、中村さんが囁く。舌が、耳の中を、ゆっくりと泳ぎ、耳朶を甘く噛まれる。

「そ…なこと、言わないで…ああん、んっ…」

じらすように、なかなか直接触れてくれない指を、あたしは切なく求める。

ぬるん、と脇から滑り込んだ指がクレバスを捕らえたとき、あたしは状況も忘れて、せがんだ。

「もう、だめ…欲しいの、もう…」

中村さんが、いたずらっぽく言う。

「だーめ、まだ…唯ちゃんを食べてもないし…まだ、我慢しなさい」

 

するり、とショーツを脱がせた彼が、自分の身体をあたしの脚の間へと移す。

中村さんの綺麗な唇が、あたしの足をたどり、指にキスをしながら視線だけをこっちへと寄こす。

月明かりに浮かび上がった艶やかなその表情に、あたしは思わず見とれてしまう。

急に足の裏をぺろっと舐められて、思わずひゃっと声が出た。

「や、そんなとこ、汚い…」

避けようとするのに、中村さんは、唯ちゃんはどこだって綺麗だよ、と言いながら、まるで本当にあたしを食べる

みたいに、足首からふくらはぎ、太ももと、優しく噛みながら、もうすっかりびしょぬれの泉に近づく。

やっと触れてもらえる…そう思うのに、なかなか中村さんの舌はあたしの中心にこない。

あたしはじれて、瞳で中村さんを求める。

ねえ、分かってるでしょ、こんなに欲しがってるの…。

視線に気づいた彼は、くくっと笑うと、やっと指をそこに差し入れてくれた。

人差し指と、中指でつままれた芽から、蜜が溢れる。

淫靡な水音が跳ね、腰が浮く。

 

「ああっ、んっ、やあん、もっとおっ…」

急に、ざっくりと指が入れられて、あたしは、跳ね上がった。

「はあっ!…ん、んん、あんっ…!」

指が入ったり出たりするのが、たまらなく気持ちよくて…でも、だんだん物足りなくなってゆく。

だめ…もう、欲しい、のに。

中村さんは、あっさりと指を引き抜くと、埋まっていた場所に、舌を這わせる。

「唯ちゃんのココって、甘い香りがするんだよ…知ってる?」

ちろちろと赤い舌がうごめくのを、あたしはたまらない気持ちで見る。

舐めあげられるたびに、指がいいところを突く度に快感は増していくけれど、でも、知っちゃってるから。

もう欲しいの、この先にある、もっと気持ちイイコト。

 

どんなに乱れていても、羞恥心が無くなる訳じゃない。

でも、あたしは、精一杯の勇気を出して、言う。

「もう…して…?」

その言葉を聞いた中村さんは、あたしの上にぴったりと重なると、もう一度、優しいキスをしてくれる。

まるで、世界一、誠実な恋人のような。

「唯ちゃん…。好きだよ、俺だけのものに、なって…?」

何かを答えようとしたその声は、やっともらえた快感への、嬌声に変った。

指では届かなかったその場所に、私の腰を抱えた彼自身が激しくぶつかってくる。

自分の中が、中村さんを求めて、絡みつくのが分かる。

もっともっと、感じて、あたしの中で…もっともっと、あたしを求めて…!

「唯ちゃんの中…良すぎ…うっ、そんなに絞めないで…」

中村さんが、あたしの腰を抱きながら、快感を逃がすように中をかき回す。

大きく、ゆっくり動いたり、早く、強く突かれたり…。

波が大きくうねるように、高まっていく淫らな音と切なさに身もだえする。

もう、だめ…いっちゃうっ!

「ああんっ、あんっ、あ、あ、あ、あ…ああんっ!」

中村さんを、もっと、もっと感じさせて…。

もう少しで、頂点が見えそうだったその時引き抜かれて、あたしは切なさに狂いそうになる。

見下ろすと、中村さんが、息を整えている。

「だめ…このままじゃ、もういっちゃうよ、俺…」

耐えるようにこらえる中村さんを、身体を起こしたあたしが押し倒す。

「いいの…もう、いっしょにいこ…?」

驚いて目を見開く彼に馬乗りになって、自分の手で彼自身をあたしの中に導く。

ゆっくりと彼の上に、腰を落として、じっくりと味わう。

あ…。

自分のペースで動かせるのも…気持ちいい…。

 

「ああん、あん、あああっ!いいっ、いいっ!」

下から中村さんが、胸をもみしだいている。

がんがんと下から突かれたあたしは、何もかも忘れて、感じるままに声をだす。

「ああーっ、いいの、いいのっ!もっと、もっと、…中村さん、好きっ…!」

唯、唯、と名前を呼びながら、彼の整った顔が、苦しげに歪む。

そんな表情さえ綺麗で、彼にそんな表情をさせているのがあたしだということに、喜びがわく。

「いくよ…?」

かすれた彼の声に、あたしは無言で頷くと、目をつぶって快感に身をゆだねる。

一際早められた彼の動きが、強く何度もあたしを貫いて…。

もう、何もかも、どうでもいい!

中村さん…!

 

あたしたちが、あんなことやこんなことをしているうちに、隣の部屋がすっかり静かになってたことに、その時の

あたしたちは、全っ然、気がついてなかった。

翌日の朝、中村さんファンたちが睨んでる理由を、同期から聞いたあたしは、それこそ音をたてて顔から血の

気が引いた。

あ、あ、あ、あたし、これからどうやって会社に行けばいいのお〜〜!!??

自業自得とはいえ、みんなの視線が痛いよお〜〜。

もう一方の当事者、中村さんはといえば、涼しい顔で取り囲むファンたちと話してる。

「ねえ、唯とつきあうんですかあ!?彼女作らないって言ってたじゃないですかあ〜」

ふくれっつらのその女性社員に、あんな激しい夜を過ごしたとは思えないくらい爽やかな中村さんは、あっさり

と答える。

「ん?彼女になんか、しないよ」

その言葉を聞いたファンたちが、してやったりという顔で、あたしを見て…恥ずかしさに身がすくむ。

 

ひどい…本気だなんて信じてなかったけど、何も今、そんなことみんなの前で言わなくても…!

それじゃあたし、かんっぺきに一晩だけ遊ばれた女じゃん…。

不覚にも、涙が零れそうになった、その時。

「今日、奥さんにするから。

 これ、社員旅行兼、新婚旅行だったんだよね〜!」

え、えええっ!!??

ファンたちの輪を抜けて、つかつかとこちらへと近づいて来た中村さんは、不意にあたしの前へとかがむと、

ちゅっと頬へとキスをして…驚くあたしを、がばりとお姫様だっこにしてしまう。

「いいよね、唯ちゃん?

 昨日、俺だけのものになるって、言ってくれたよねっ!」

みんなの、ええっ、マジー、とか、嘘でしょー、とか言う声が遠くに聞こえる。

あたしは、とにかく驚いて目を見開くばかりで、なんにも言えない。

その沈黙は、YES、と受け取られたらしく、あたしはみんなに囲まれたまま、温泉近くの古い教会へと無理矢理

連れこまれてしまった。

 

「えっと…あの、やっぱり結婚って…もっとなんていうか慎重に…」

近くの写真館から、急遽借りてきたというドレスとブーケを持たされたあたしは涙目で周りのみんなに訴える。

っていうか、ねえ、ホントに、結婚するの?あたし。

いやいや、盛大な冗談だよねえ、コレ。

誰かが大きな看板持って、『どっきり』でしたー、って言ってくれるんだよね、ねえ、そう言って!

「いいじゃん、せっかく社員いっぱい揃ってるんだし」

「そうそう、中村さんとだよおー、イヤならあたし、変ってあげるよお!」

腕自慢の同期の子たちが、せっせとお化粧したり、髪を結ったりしながら口々に言う。

ね、ねえ、冗談にしてはちょっと長すぎるよ?

そろそろ嘘だよーって言ってもいいんじゃない?

そんな事を思いながら、されるがままに身を任せていたあたしは、ちゃくちゃくとみんなの準備が整っていくのを

見ながら、少しずつ冗談じゃないような予感がし始める。

「ででで、でも、家族もいないし…」

なんとか現状から逃げようとするあたしに、支度室を覗き込んだ中村さんが、あっさりと言う。

「あ、今日の朝、電話して呼んどいた。昼頃には着くってさ」

えええ!ウチの家族も呼んだのおっ!?

良かったねえ、なんて口々にお祝いを言ってくれる同期たちに、あたしはもう、返す言葉も浮かばない。

 

いったい、なんでこんな目に。

社員旅行なんてぶっちして、のんびりした休日にするはずだったのに。

それにそれに。あたしにだって、結婚に夢があったのに!

ロマンチックな場所でプロポーズされて、一緒に婚約指輪とか選んで…。

結婚式はハワイに、新婚旅行はヨーロッパに行くはずだったのに…!

なんで、なんでこんなことになるのおっ!?

 

バージンロードに続くドアの前で、不安な気持ちのままパパの支度を待つあたしに、中村さんが悠然と近づい

てくる。

うっわあ、カッコイイ…。

借り物のタキシードなのに、まるで王子様のようにそれが似合う彼は、確かに誰もが夢見る新郎だろう。

でも。でもでも!

「ほんっとに、本気なんですか…?みんなもあたしも半信半疑なんですけど…」

今さら冗談と言われても、困るけど…でもどうしても納得いかないあたしは、責めるような視線で中村さん

を見上げる。

「はい、これ」

にこりと笑った彼が、あたしの手のひらの上に、リングを載せる。

きらり、と眩しいそれはどう見てもエンゲージリングで…。

ひゃあ、このダイヤ…1キャラはありそう…。

「気に入ってくれた?勝手に選んじゃって、ごめんね。

 でも、マリッジリングは一緒に選びに行こう?」

…中村さん…?

あたしを見つめるその瞳はとても真摯で、近づいてくる気配に目を閉じると、触れるだけのキスがそっと

与えられた。

「ホントは、プロポーズだけのつもりだったんだけどさ、なんかこうなっちゃった…ダメ?」

請うような、その瞳はまるで捨てられた仔犬みたいで…。

多分、世界中の女が、あなたのその目には、逆らえない。

んもう!

あたしは背伸びして彼の肩に手を置き、今度はあたしの方からちゅっと唇を重ねる。

 

借り物の安っぽいドレスに、ありふれたブーケ。

あたしが夢見てた結婚式は、こんなんじゃなかった…けど!

とどこおりなく結婚式は終わって…みんなの蒔いたライスシャワーが、青空に、きらきらと輝く。

あたしが欲しかったのは、平凡でもいいから幸せな結婚…だったんだけど。

こいつとじゃ、絶対、平凡な生活はできないけど!

でもでも、絶対に幸せにはなってやるー!!

なれる…よね?

ふと不安を感じて横を見ると、彼があたしの妹にウインクしてるのが見えた…ちょっと!

あたし、唯の前途は相変わらず…多難!?

 

Fin.

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